緊急会議。
「はい、池田住宅建設です。
はい、はーい。軒さん?井元さんからです。」
「現場?」
「うん、たぶん、そうやと思います」
「事件は現場で・・・
はい、もしもし、軒です・・・」
「 」
「うん、うん・・・うそっ!入らんの?なんで?・・・」
「 」
「あー、ほんまぁ、じゃあ全体に10mm下げたら?・・・あっ、そう、当たんの?」
「 」
「うん、どうしようか?うーん、ちょっと検討して、またすぐ折り返します。はーい」
「現場からですか?」
「うん、今、図面開ける?いい?」
「はいっ、えーっと、ちょっと待ってください、ここだけ保存して・・・はい、出しました。」
「えーっと、ここの納まりやねんけど・・・
今、言ってたのは、ここを厚み分だけ移動させたら、余裕できるやろ?」
「あぁー、そうですね。あと、この奥っ側(おくっかわ)、
ここ、もうちょいふかせるんじゃないですか?」
「うん、そうやな、さっきのとこと、合わせてだいぶ稼げるなあ」
「軒ちゃん?」
「んっ、なに?横山さん」
「それって高さ方向は、もうちょっといじめることってできひんの?」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ、それは特注対応で・・・」
「でもたぶん、そこは対応外やったんちゃうかなあ?」
「・・・えーっと、うん、そうみたいですね。」
「・・・」
「じゃあ、たて枠は?どうすんの?」
「・・・」
「仕上材は?」
「・・・」
「色、合う?」
「・・・」
「・・・」
「あと、当たり前ですけど、質感も違いますよね」
「・・・」
「・・・ちょ、ちょっと待って、整理しよ!
ボードに描くわ!もう、ここ要らないですか?消しまーす。
と、あれ?マジックある?黒、ホワイトボード用の」
「いえ知らないです。また現場に持って行ったんじゃないですか?」
「・・・また、って、俺ちゃうよ、いもっさん(井元さん)ちゃうか?」
「いえ、そういう意味じゃないんですけど・・・」
「はいはい、もう、そんなんいいから早よ書いて!はい赤ペンでいい?」
「うん、横山さん、ありがとう・・・」
「・・・」
「えーっと、まず現況がこうやろ?で、ここの枠を、厚みぶん下げます。
で、えーっと、ここの断面、書くと・・・んっ、なんかこのペン・・・
先っちょ、潰れてる・・・けど、なんとか書けるか・・・」
「・・・」
「・・・」
「うん、まあいいわ、で、ここの柱から、ボード分、12mmがこうきて・・・
で、今言ってた、6mmっていうのが、ここに当たって・・・それから・・・
現状やと、この今、ここの入隅の下地分が、こう・・・
で、ここで・・・こんな風に、っと、で、・・・・・・」
「・・・」
「何?木場くん」
「・・・いえ、すいません、なんにもないです。続けてください」
「・・・何、ニヤニヤしてんねん!」
「ほんまや、どうしたん、なんか変な、可笑しいとこある?」
「・・・いやっ、あの・・・・・・いやっ、やっぱり、やめときます・・・」
「なに、言って!」
「言いやしー」
「あのー・・・、いや、やっぱりこんな時、緊急事態に不謹慎・・・」
「どういうこと?」
「・・・今、軒さんが一瞬、お医者さん、ドクターに見えました」
「・・・」
「?」
「この間、たまたまテレビ点いてて・・・」
「はいはい、それで?」
「形成外科か整形かのお医者さんが画面で・・・」
「・・・」
「・・・」
「手術の説明してたんです、はいまず、目尻に5mmだけ切り込みを入れてぇ〜、みたいな感じで」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「白衣着て・・・」