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『土佐杉で造る真壁の家ができるまで』

はじめに申し上げます。 『土佐杉で造る真壁の家ができるまで』は、ながいながいストーリーです。


「ひとつの家が出来上がるまでを、出来るだけくわしくみなさんにお伝えしたい!」

その思いからつくったページです。どの工程も短くするわけにいかず、ましてや省くことはできずに、こんな長いページになってしまいました。
しかし、それだけ家づくりは手間暇がかかるものだということがお分かりいただけると思います。家とは、買う側にとっては一生付き合っていくもの。作る側も、そのことを誠実に考えれば考えるほど、やはり手間暇がかかってきます。

ゆっくりスクロールして順番に流れを追っていただくのも良し、また右側に出ているナビゲーションバーで興味のある工程(例えば「9.土台引き」など)をクリックしていただければ直接そこだけを見ていただけるようになっています。




さて、わたしたちが、国産材の「杉」にこだわったのには訳があります。
今、日本の森林は荒れ放題の状況です。現在、国内の木材需要の80%を輸入材が占めており、国産材需要はわずか20%なのです。膨大な需要に国産材の供給が間に合わなくなって、安い『外国材』が大量に輸入されるようになった結果です。人工林は人が手を入れなければ、良い木が育ちません。国産材が使われないままでは、日本の森林は荒れたままになってしまいます。

私たちも建築に携わる人間として、この状況に手をこまねいているわけにはいかない!と、国産材の需要回復を目指し、つくりあげたのがコンセプト住宅『野間の家--土佐杉で造る真壁の家--』でした。

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1.地盤調査


写真左:このような機械で地耐力を測定します。
写真右:測定機器


「地盤調査」は、地盤の健康診断だと考えてください。そして、弱っている部分はしっかり治してあげることです。そうすれば、元気になった地盤はしっかり家を支えてくれます。
結論!「地盤調査は絶対にすること!」
そして調査の結果、地盤が弱いことが分かったら「費用を惜しまず適切な地盤改良をすること!」これがいい家をつくるための最初の第一歩です。
当社では「表面波探査」という地盤調査を行っています。(「表面波探査」について詳しくはこちらのPDFファイルをご覧下さい)
この方法は一般的な「スウェーデンサウンディング法」とは違い、地盤に傷を付けることなく地耐力を調べる事ができます。調査結果は下のようなグラフとなって出てきます。

ある土地の支持力別推定断面図に示す1〜5までの地点の地下4mまでのN値を示したグラフです。このグラフから、1〜5までの地点の全てがN値5以上だとわかります。つまり地盤改良の必要はありません。






2.地盤改良

表層改良
地盤の強さをしめす値を「N値」といい、「3以上」あればよいとされています。写真は「表層改良」という地盤改良を行っているところです。
ごく浅い(深さ1.5メートル程度)の地盤だけが「N値3以下」という場合に使用します。弱い部分を掘りかえし、その土に「固化材」(セメント)をよく混ぜて、元に戻し、最後によく突き固めます。

柱状改良

写真左:掘り起こした土に固化材を混ぜる
写真右:オーガー


「表層改良」は、表面付近の地盤が弱い場合には使えますが、少し深いところ(3〜8メートル程度)まで「N値3以下」の場合は「柱状改良」という地盤改良を行います。
「オーガー」で強い地盤まで届く穴を開け、その穴に「セメントミルク」(セメントに水を混ぜ合わせたもの)を流し込みます。セメントが固まるとその穴は固い地盤まで達した杭のようになります。この杭を、数十本作り、これで基礎を支えます。


3.栗石地業


写真左:栗石地業
写真右:ランマーで突きかためをしているところ

「栗石地業」と呼ばれる作業の様子です。こぶしの大きさくらいの石を手作業で敷き詰めて、その上から目つぶしと呼ばれる、さらに細かい石を敷いて、「ランマー」で平らに突き固めます。




4.防湿シート敷設


写真左:防湿シート施工中
写真右:全体に敷きつめます。

「防湿シート」(ポリエチレンフィルム)を敷き詰めているところです。「防湿」という名前の通り、地面からの湿気が床下に上がってくるのを防ぎます。ビニールハウスにも使われている材料なので丈夫です。
あまり意味がないように思われるかもしれませんが、シートを敷き終わってしばらくすると、シートの中は水滴だらけになります。それだけ地面から上がってくる湿気は多いのです。


5.捨てコン打設・墨出し


写真左・右:防湿シートの上に捨てコンを打設していきます。

防湿シートの上から「捨てコンクリート」(捨てコン)を、厚さ5センチほど打設します。
これは「捨て」という名前でわかるように、強度を期待するものではなく、地盤面を平らにして基礎の位置・幅などを正確に計りやすくするための下地のようなものです。


写真:捨てコンの上に墨出しをしているところ

この上に「墨出し」(基礎の位置を正確に出す作業)を行います。その「墨」を基準に、その後の作業は進められます。


6.配筋工事・型枠工事・基礎断熱工事


写真左:配筋の様子
写真右:ベース筋間隔の検査


捨てコンの墨を基準にして「型枠」を立てて行きます。
外周部に関しては、基礎部分を断熱するために発泡ガラスでできた住宅基礎用断熱材「コリグラス」を型枠がわりに使います。
こうすることで、建物はすっぽりと断熱材に覆われることになり、断熱性能が飛躍的に向上します。
その後、基礎の骨格となる鉄筋を組み立てる「配筋作業」に入ります。
まず、外周部の立ち上がり部分から組み始め、徐々にベタ基礎ベース部分まで進めていきます。この作業にだいたい3日くらいかかります。

基礎は、コンクリートと鉄筋が組み合わされて、初めて強度を発揮します。
なぜなら、コンクリートは圧縮(押し潰そうとする力)にはとても弱いのです。それに対して鉄は引張に強い性質を持っています。
ですから、どちらもおろそかにしてはいけないのです。

配筋作業には…
「鉄筋同士のつなぎ目の定着長さ」がとれているか
「鉄筋同士の間隔」がとれているか
「開口部分の補強筋」は正しく配置されているか
「コンクリートのかぶり厚さ」はとれているか
などのチェック項目があります。


写真左:人通口の開口補強筋
写真右:配筋が終わると、中枠を立てていきます



写真:(財)住宅保証機構の検査員による「配筋検査」の様子



7.コンクリート受入検査・生コン打設


写真左:生コン受入検査。生コンの水分量、塩分濃度、空気量などを測定
写真右:いよいよ生コン打設開始。ミキサー車からポンプ車にコンクリートが流し込まれます


いよいよ、型枠に生コンを流し込む打設作業に入ります。
まずは現場に納入されたコンクリートに異常がないか検査します。
真ん中に見えるのは、「生コン」を検査用のバケツに入れてひっくりかえしたものです。
ひっくりかえして、生コンが何センチ崩れたか、その値を調べます。この値を「スランプ値」といい、生コンの水分量を知る大事な数値になります。

コンクリートの品質は鉄筋の錆びや、基礎のクラックなどを防ぎ、基礎の寿命を長くするためにも重要なところですから、しっかり検査する必要があります。


写真左:ポンプから生コンが飛び出します
写真右:すぐにならしていきます


8.型枠解体・養生期間


写真:基礎養生中。硬化するにつれて表面は真っ白になっていきます。建物のおおまかな形がわかるようになってきました


生コン打設後、1・2日置いてから型枠を取り外します。十分に固まっているように見えますが、まだコンクリートは本来の強度まで硬化していません。
ここから上棟までの間、基礎の強度がでるまで「養生期間」を置きます。夏場であれば、約7日間、冬場は2週間くらいです。
養生期間が終わるといよいよ上棟工事に入ります。


9.土台引き


写真:土台引きをしているところ。この土台が家全体を支えています


いよいよ、家の骨組みを造る上棟工事に入ります。
ここからは大工さんの出番です。
まずは基礎の上に、建物を支える「土台」とよばれる材料を敷いていく「土台引き」という作業に入ります。
土台に穴を開け、基礎から飛び出してくる「アンカーボルト」を通し、上からナットで締め付け、基礎と構造体をしっかり緊結します。


10.上棟工事


写真左:まずは柱から立てていきます
写真右:窓の鴨居や敷居は既に工場でプレカットされているので、この時点で組み立てていきます


いよいよ「上棟(棟上げ)工事の日」です。
家づくりの中で、もっとも慌ただしい一日のはじまりです。レッカー車で部材を吊って、大工さんがそれを組んでいきます。
この日は、大工さんや監督さん、業者の人たちで現場はごったがえします。
1日で屋根の下地まで完成しないと、家の骨組みが雨などで濡れていまう可能性があるので、大工さんは応援を呼んで、5・6人で仕事をします。


※在来木造工法って?




写真左:柱の上に飛び出している部分がほぞ。梁の下にこれと同じ穴があけてあり、そのにこのほぞを差し込みます
写真右:梁の上に当て木をして「かけや」と呼ばれる大きな木槌で叩きながらしっかりと組んでいきます

この住宅では、柱・梁などの構造材に高知県産の「土佐杉」を使用しています。
在来木造工法では、部材同士の接合部(継手・仕口)は「ほぞ」と呼ばれる凹凸のを組み合わせつことによって成り立っています。
この接合部は、どうしても木材の「断面欠損」が大きくなってしまい、構造上の弱点となってしまいます。
この住宅では、断面欠損が特に大きい「通し柱」には、一般的に使われる3.5寸(105ミリ)よりふたまわり大きい「5寸角(150ミリ)」の角材を使用。その他の柱材は「4寸角(120ミリ)」の材料を使い、構造の強化を図っています。

追い掛け大栓継ぎ

写真:追い掛け大栓継ぎ


梁と梁の接合部には「追い掛け大栓継ぎ」とよばれる継手を使用しています。
部材同士の接地面積が大きい、非常に優れた継手ですが、加工が難しいため現在ではなかなか使われることはありません。
この住宅では、この難しい継手をプレカット工場での「手作業」の加工を取り入れることにより、現場での省力化とコストダウンを図っています。

写真左:追い掛け大栓継ぎを継いでいるところ
写真右:梁の両端にこのような加工がされており、この2枚を合わせることで梁と梁を接合します

こみ栓工法

写真左:ほぞにあけられた穴に、梁を貫通させて、こみ栓を打ち込みます
写真右:こみ栓を打ち込んでいるところ


この住宅では、柱と梁の接合部にほぞを使っていると説明しましたが、ほぞだけでは引き抜く力がかかったときに簡単に抜けてしまいます。
そので、この住宅では、ほぞの引き抜き防止のために「こみ栓」とよばれる小さな木の棒を打ち込んで固定しています。このこみ栓が「ピン」のような役割を果たし、柱と梁をしっかりと緊結します。
こみ栓工法は、昔の日本建築ではよく使われていましたが、最近では手間が掛かることからほとんど使われなくなっています。


12.2階床剛床仕様


写真左:構造用合板を張っているところ
写真右:2階床全景


2階床には従来の「根太」を使わず、梁を約90センチごとに配置して、その上に構造用合板28ミリを張る「剛床」仕様を採用しています。
こうすることによって、構造体と床面が一体化し、地震や台風などの横からの力に対して、「面」で支える形になり、強度がアップします。


13.小屋組作業


写真左:ラグスクリュー
写真中:ラグスクリューを留めているところ



写真:一番高いところにある梁が棟木。斜めにかかっているのが垂木です


屋根の下地となる「小屋組」を組んでいます。
一番高いところにある梁「棟木」から「桁」にかけて、「垂木」とよばれる材料をななめに架けていきます。
垂木は10.5センチ角の材料を90センチ間隔で配置し、梁に対して「ラグスクリュー」という特殊なビスで留めていきます。


14.野地板張り


写真:屋根全景

垂木をかけおわったら、その上に「野地板」を1枚1枚ビスで張っていきます。
野地板には国産杉の30ミリ厚の無垢材を使い、これが屋根の下地と共に天井仕上げも兼ねています。



写真左:野地板を張っているところ
写真右:室内側から見たところ。これがそのまま天井仕上げになるため、工程を一つ減らすことができます


15.屋根外断熱材敷設・通気用垂木施工


写真左:気密テープ施工



写真左:断熱材を張っていきます
写真右:通気垂木を留めているところ


野地板を張り終わった後、外断熱用の断熱材「硬質ウレタンフォーム」を隙間なく張っていきます。
継ぎ目には「気密テープ」を張り、外気の流入を防ぎます。
断熱材を張り終わると、その上に通気層を確保するための45ミリ角の垂木を30センチ間隔で留めていきます。
この垂木の間の通気層を空気が流れて、熱と湿気を排出する仕組みになっています。


16.屋根工事


写真左:アスファルトルーフィングを張り終わったところ
写真右:カラーベスト施工中


通気層用の垂木の上に、屋根仕上げ用の構造用合板12ミリを全面に張った後、屋根の工事に入ります。
まず防水用の「アスファルトルーフィング」を全面に敷き詰め、その上から「カラーベスト」を張っていきます。
これで屋根の工事は終了です。
構造体を雨などで濡らさないようにするためには、ここまでの工事をいかに早くできるかが、重要なポイントです。


17.筋交い・間柱施工


写真左:筋交い施工中
写真右:×になっているのが筋交いです


屋根工事が終わると、大工さんが内部の工事に入ります。
まずは「筋交い」・「間柱」の取り付けから始めます。
特に筋交いは、建物にかかる横方向の力を支える大事な部材ですから、構造計算で出された位置に図面を確認しながら1本ずつ施工していきます。
また間柱は、外部の断熱材や外壁材を支えるために45×105ミリとかなり大きめの部材をつかいました。


18.木酢液散布


写真左:木酢液を散布しているところ
写真右:強烈な炭の匂いがします


床下に防虫のための「木酢液」を散布します。
木酢液とは、木炭を作るときに同時に得られる樹木のエキスのようなもので、木酢液の中には、200種類もの成分が含まれています。植物の生育を促進したり、病害虫の防除やカビなどを生えにくくする性質、消臭の効果などがあります。
外断熱、気密住宅なので、基本的に床下は室内と同じ環境になるため、危険な薬品は使わずに自然の素材を使用します。


19.外部サッシ取付工事


写真左:サッシを取り付ける下地を検討中
写真右:サッシを取り付けたところ


外部のアルミサッシを取り付けていきます。
開口部はどうしても熱が逃げやすく、入りやすい部分です。
熱の流入、流出を少しでも抑えるため「断熱ペアガラスサッシ」を使用しています。
このサッシを使うことで、熱の移動が少なくなり、冷暖房の効率がよくなるだけでなく、冬場の結露を完全に抑えることができます。


20.外壁外断熱工事・通気胴縁工事


写真左:断熱材を張り終わったところ。継ぎ目には気密テープを張っています
写真右:上下に走っている木材が胴縁。この間を空気が移動します


外壁にも同じように断熱材を外側から張っていきます。
サッシとの取り合い、断熱材同士の継ぎ目には気密テープを張っていきます。
断熱材を張り終わると、その上から通気層を確保するための「胴縁」という木材を外断熱専用の長いビスで留めていきます。
こうすることによって、胴縁の間を空気が移動し、熱を上方に逃がしてくれます。


21.内部造作工事


写真左:無垢杉の床材を張っているところ。一枚ずつ隙間なく張っていきます
写真右:無垢材のドアをとりつけていきます


内部では大工さんが「国産杉板床材30ミリ」を張りはじめます。
自然の木材にがどうしても反りや割れなどがあるため、通常の合板フローリングに比べると手間はかかりますが、その分仕上がりは既製品にない温かさがあります。
張り終わったら、その後の工事で汚れたり、キズがつかないようにベニヤ板やシートで養生します。
床を張り終わった後は、内部のドアや引き戸などの建具をとりつけていきます。


22.ボード張り工事


写真左:壁面に石膏ボードが張られました
写真右:水廻りには耐水石膏ボードを使用。ボードの色が違うのが分かります


建具を付け終わると、クロスの下地となる「石膏ボード」を張っていきます。
先に天井から張り始め、徐々に壁を張っていきます。
洗面・トイレ・キッチンなどの水廻りには、「耐水石膏ボード」を張ります。
ここまでくると、大分、部屋の雰囲気が分かるようになってきます。


23.外壁下地工事


写真左:デラクリートを張っているところ
写真右:その上から下地モルタルを塗っていきます


外部では、外壁の仕上げ工事に入ります。
まず、通気胴縁の上に「デラクリートボード」というセメント板をビスで留めていきます。
通常、吹き付けやコテ塗り仕上げの外壁ではクラック(ひび)が最大の問題でしたが、このデラクリートボードはセメント板の両面にガラス繊維を埋め込んだもので、建物の動きに合わせて伸縮し、表面にクラックが発生しないという優れものの下地材です。
ボードのつなぎ目にガラス繊維を張った後、「ベースコート」という専用の下地モルタルを全面に塗ります。


24.外壁仕上げ工事


写真:微妙なコテむらがいい感じです



写真左:一度粗塗りしたあと・・・
写真右:コテで仕上げていきます


下地モルタルを塗り終わった後、表面の仕上げ工事に入ります。
専用の仕上塗材をコテを使って塗っていきます。
人の手で塗っていくため、サイディングなどの既製品にはない素朴な風合いがあります。
これで外壁工事は終了ですが、足場解体の日まで建物の外観を見ることはできません。


25.ケナフエコクロス貼り工事


写真左:白いところがパテです
写真右:その上からケナフクロスを貼っていきます


内部では、大工さんが石膏ボードの上にケナフクロスを張っていきます。
まず、石膏ボードの上に「パテ」を塗り、ボードの継ぎ目やビスの穴などを隠して、正面を平らにしていきます。
その上から、「ケナフクロス」をクロス屋さんが貼っていきます。ケナフクロスは、ケナフを主原料とした紙壁紙です。化学物質を使っていないため、環境や人に優しい素材です。
しかし、原料が紙のため、従来のビニールクロスよりも施工が難しく、腕の良い職人でないとうまく貼れません。
ここまでくると、もう完成は間近です!


26.完成


写真左:駐車場土間施工中
写真右:ウッドデッキ施工中



写真左:トイレも設置されました
写真右:いよいよ完成です


クロス工事終了後、洗面台・トイレや照明器具、スイッチ、コンセントなどを取り付けていきます。外部では、ポーチや駐車場などの外構工事を行います。
床や階段を覆っていた養生材が剥がされ、家全体をクリーニングする「洗い」という作業が終わると、工事は終了です。
あとはお客さんの引越しを待つだけです!


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