家づくりイベント情報

木材は、伐採時は多量の水分を含んでおり、乾燥する過程で変形していきます。乾燥している材ほど狂わないので住宅材料としては最適。自然に乾燥するしか無かった昔は伐採後、葉が枯れるまで山中に放置したあと製材し、さらに乾燥させる『葉枯らし乾燥』という方法が一般的でした。
ところが、時間が掛かる天然乾燥は安くて早い機械乾燥にとって変わり、儲からない天然乾燥を手掛ける製材所は今ではほとんど無くなってしまいました。

ではこの乾燥方法で何が変わるのか？実は同じ杉材でも驚くほどの違いがあります。
人工乾燥材しか見たことのないスタッフが『同じ杉でもこんなに違うの？！』と驚いたほどの違い、それは高温で乾燥させる人工乾燥材にはない、杉独特の自然な木目や表情、そして香りです。

乾燥場所の確保、手入れする人件費、工期・・・天然乾燥はどれを取っても時代に逆行しています。通常は４ヶ月程度で終わる工事期間が、最低でも１年以上になってしまいます。施主さんにとっても工務店にとっても大変な労力を要する家づくりです。

しかし今回、あえてこのスロービルドな家づくりを決断されたＯ様邸の完成見学会を開催できることになりました。
Oさんは私と共に高知まで土佐杉を見に行かれるほどの惚れ込みようで、自ら『天然乾燥材で建てたいんです！』というお声を頂き、１年３ヶ月という長い期間を経てようやく完成となりました。

施主側にも造る側にも様々な時間的制約があります。明らかに時代に合っていないのも分かっていますし、天然乾燥を皆さんに薦めるつもりは全くありません。
ですが、私が若いスタッフやこれから家づくりをされる方に知っておいて欲しいのは『昔の家はこうやって造られていた』ということ。
そしてこれが、『失われつつある家づくり』だということです。

私にとっても天然乾燥材で家を建てられるのは今回が最後かも知れません。それほど貴重な機会を皆さんにご提供できることが、Oさんと同じく私も個人的にうれしいんです（笑）

この機会を活かすために、Ｏさんには打合せ当初から見学会のお願いをしました。それを快諾して頂いたＯさん御家族に本当に感謝したいと思います。
また、施主さんご自身も見学会にご参加頂ける了解を頂きました。
なぜ天然乾燥材を選ばれたのか？を直接伺って下さい。そして天然乾燥された杉本来の表情や香りがどんなものなのかを生で体感頂ければと考えています。

伐採後、枝や葉が枯れてしまうまで山中に放置すると、葉や枝が幹の養分を吸い上げ、水分量を無理なく低下させます。これが葉枯らし乾燥です。その後山から下ろし、大きめに製材してから、風通しが良い場所で天日で乾燥させますが、長雨等にはさらさないようにします。小断面の柱等は屋根付きの場所で乾燥させます。

天然乾燥では乾燥が進むと割れが発生します。極力割れを出さない為に割れ止めを表面に塗布しながら慎重に月日を重ねます。とても時間と根気のいる作業です。杉は花粉症でかなりの嫌われ者ですが、乾燥においても含水率（水分の含有量）が高く、乾燥させるには最低でも半年以上掛かります。

●天然乾燥材の魅力。

通常使われる人工乾燥（機械乾燥）では大きなコンテナのような乾燥釜を使って、数日間で高温強制乾燥させます。含水率が下がるので変形や反りが少なく、構造材としては最適ですが、高温での乾燥によって木目はかなり薄く、全体的に濃淡のない表情になります。

天然乾燥では杉自身が持っている赤と白の木目を自然のまま活かすことができ、また新鮮でさわやかな香りも特徴です。

家づくりにおいて時間や工期はとても大事な要素です。転勤やお子さんの入学・転校等が絡み、時間的余裕の無い方も多いことと思いますが、そういった方は今回の見学会は参加されないほうが得策です。Oさんのように天然乾燥材のとりこになってしまっては大変だからです・・・
逆に国産材に興味のある方、昔ながらの家づくりに興味のある方は絶対に御参加下さい。次はいつ天然乾燥材を使った家づくりをお見せできるかわかりません。貴重な機会をお見逃しなく！

この内覧会は終了しました。
06/02/25 『土佐杉天然乾燥材を使った真壁の家』施主参加型完成内覧会イベントレポート