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なぜ地熱住宅なのか?そのきっかけからモデルハウス建築までの道のり

設計部小谷
池田住宅建設 設計部 小谷です。
今回のプロジェクトに入るまでに、実に長い道のりがありました。
数回に渡るスタッフ全員でのミーティング、自分たちの目で確かめるための研修・・・

ここでは私たちがなぜ地熱住宅を始めようと思ったのか、そして実験棟としてのモデルハウス建築に至るまでのいきさつ、プランニングでの苦労話を僕の愚痴話、じゃなくて物語風につらつらと綴っています。

はっきり言って、超長いコンテンツですので覚悟してお読み下さい。
『待ちきれない!』と言う方はこちらをクリックしてモデルハウスの概要を見て頂いたあと、お読み頂ければと思います。


地熱住宅プロジェクトのきっかけ

当社では数年前から『外断熱工法と無垢材を使った家づくり』に取り組んできました。
断熱性を高めて吹抜けを設けたりすることで明るい家を実現し、無垢材の温かい足触りは真冬でも素足で生活できる、というお客さんの声も沢山頂いています。
これら全て『快適で安全な住宅』を実現するための手段に他なりません。


ただ、たとえ外断熱の家、断熱性能が高い、といっても『真冬の寒さ』『真夏の暑さ』をしのぐためにはどうしても補助の暖房・冷房などが必要になります。


『もっと自然の力を利用して快適な室内環境を実現出来る方法はないものか?』
というのが最近の池田住宅の悩みだったんです。

OMソーラー研修
で、色々調べた結果、候補に挙がったのが・・・

『OMソーラーシステム』

『地熱住宅システム』です。
地熱住宅研修
そこで2月には静岡県にあるOMソーラー協会の施設<地球のたまご>で『OMソーラー』の研修を、4月には千葉県の玉川建設本社まで出向き『地熱住宅』の研修をスタッフ総出で受けてきました。
そして、『果たしてどちらが池田住宅の求めているものなのか?』をスタッフ全員の目で見極めてきました。


そして、コスト・施工・性能の3点について、スタッフ全員ミーティングした結果、『地熱住宅』を池田住宅の家づくりに取り入れよう、という結論に至ったんです。

(なぜ『OMソーラー』じゃなくて『地熱住宅』を選んだのか?この辺りについての詳しい説明をまとめた資料を無料でお配りしています。ご希望の方はこちらをクリックしてお申し込み下さい。)


『地熱住宅モデルハウス建設計画』

さて、いざ『地熱住宅を始めよう!』ということになったんですが、ここで問題が一つ。


『地熱っていう目に見えないものをどうやってお客さんに薦めたらいいの?・・・』


そうなんですよね。理論理屈は理解できても、本当に効果があるの?って所は実際に体感してもらわないと分かってもらえないのでは・・・

ちなみに、今まで私たちは新しいコンセプトを打ち出すたびに、そのコンセプトを具現化した
『モデルハウス』を造ってきました。


モデルハウス、と言ってもそんなたいそうなものではなくて、普通の住宅です。
ただそのコンセプトに沿って作られた、スタッフのこだわりの塊のような住宅です。

国産材にこだわった野間の家
それを皆さんに見て頂いて、その後分譲住宅として販売します。
私たちはこれを『コンセプト住宅』と呼んでいます。

『国産材にこだわったコンセプト住宅』



建ててから販売するので、展示場のような維持費は掛かりません。
無駄な経費を使って家を高くすることがないので、私たちのような小さな工務店にはピッタリです。


で、今回もスタッフ全員が、
『池田住宅らしさを全面に出した、地熱利用のコンセプト住宅を建ててみたい!』
という結論に達しました。

地熱住宅プロジェクト、いよいよ始動です。


難航するモデルハウスのプランニング

さて、いよいよ『地熱住宅モデルハウス建設計画』がスタートしました。
ところがここからが問題・・・

コンセプト住宅はまさに私たちのやりたい家づくりそのもの、なのです。
そして社長含めスタッフそれぞれのしたいことは人それぞれ。
基本的に設計は僕なので、参考までにみんなの意見を聞いてみるんですが・・・

いつも『話がまとまらない』・・・トホホ・・・

注文住宅であれば、そのお客さんだけが満足する家づくりをすればいいんですが、コンセプト住宅に関しては『スタッフそれぞれが満足できるもの』を目指さないといけません。


これが実に難しい。みんな言いたい放題・・・人の気も知らずに・・・(泣)


お客さん担当のスタッフからは『デザイン』や『使い勝手』、『住宅設備』の要望が。
現場監督からは『ここは手間が掛かるよ』とか『納まりが悪いなぁ』と厳しいご意見。
挙句に社長からは『お前、コスト考えてんのか?』と・・・(号泣)


というわけで、このわがままな大人たちをまとめるのはとても大変です。

『・・・あの、僕も忙しいんですけど・・・』と言いたい!

と、それは置いといて、日常業務をこなしながら、合間を見てのプランニング作業。
これは時間が掛かりそうな予感が・・・


プランニングの問題点・・・『換気システム』

千葉県まで出向いて地熱住宅の研修を受け、施工途中の工事現場も見てみると、今の池田住宅の家づくりと地熱住宅の決定的な違いがある程度分かってきました。
そしてそれが、『プランニングの制約になるだろうな』と。

ただ、それをクリアするために、いくつかやってみたいことや、『こうすればもっと良くなるのでは?』という考えもあったんですが、それは後ほど。

で、プランを考える上で一番大きな障害になるのが『換気システム』です。


小屋裏の換気ダクト
今までの池田住宅では、どちらかというと気密はそんなに重要視せず、外断熱工法はあくまで『矛盾の無い断熱方法だから』という理由で選択していました。

換気システムに関しても、各部屋ごとに給気口・排気口を取るシステムを採用していました。これは、コストの安さ、配管スペース等の問題を考慮してのことです。


ところが『地熱住宅』では、地中からの熱を有効に利用するために、徹底した高気密・高断熱住宅となっていて、換気システムも中央制御型の『セントラル換気システム』となっています。


話が少し変わりますが、今の住宅業界では『気密』に関しては賛成派・反対派に大きく分かれます。

当社はどちらかというと『反対派』に属しているといえます。どうしても機械に頼って生活しているような印象があり、またシックハウス法で定められた24時間換気にしても、『機械換気だけで化学物質が排除できるの?解決方法になっていない』と考えていたんです。


ただ、気密に関しては、両者の言い分にそれぞれ正当性があるとも感じていました。
工法には『デメリットのないもの』なんて絶対にありません。

特に高気密・低気密はメリット・デメリットが相関関係にあります。
こちらの『いいこと』があちらの『ダメな部分』になってきます。
どちらがいい・悪いではなく、『目的のためにどちらを選択するか?』ということなんです。
小屋裏部分の構造体を見せて、部屋の一部として使っています
また、私たちが高気密住宅を受け入れられなかった最大の理由が『配管スペース』の問題です。

セントラル換気システムとなると、小屋裏の排気ファンに各部屋からのダクトを繋がなければいけないので、排気ファンを設置する部分とダクトを配管するスペースが必要になってくるんです。

ただ、天井の構造材を見せる工法にすることの多い池田住宅としては、このダクトスペースを取ると開放感が損なわれ、またコストもグンと上がるため、壁に直接取り付ける各部屋排気にしていた、といういきさつがあるんです。


乗り越えなければいけない問題、それは配管スペースをどう確保するのか?という一点にあったんです。


勾配天井と配管スペースの両立

基本的に1階は天井仕上げをするので、天井ふところ(天井と2階床までの間のこと)さえあれば配管を通す事が出来るわけなんですが、電気配線のような細いものならともかく、換気ダクトは太さ100〜150ミリもあり、十分なふところを確保しておかなければいけません。

で、地熱住宅研修では『十分な配管スペースをとるために建物を高めに設定して下さい』とのことでした。


ここで、建物の高さについてちょっと触れたいと思います。少し専門的な内容も含みますが、さらっと読んで下さいね。

<軒高と階高>

軒高と階高 参考断面図
建物の建っている地盤面から、屋根を支える梁(軒桁)の上までの高さを『軒高』、ある階の床からその上の階の床までの高さを『階高』と言います。

ちなみに池田住宅の標準階高は

2,730mm+2,400mm=5,130mm

地熱住宅資料の参考階高は

3,100mm+2,900mm=6,000mm

その差なんと870mmです。つまり単純に地熱住宅にする場合は今より870mm家を高くしてください、ってことです。

『だからどしたん?家高くしたらええやん』と思われるかも知れませんが、家を高くすることで外壁・内部の仕上げ面積が増えたり、階段の段数が増えたり、外観のバランスも悪くなったりと、あまりいいことはないんです。
また広〜い敷地で建てる場合は別ですが、都市部の狭小地では『北側斜線』などの高さ制限に掛かる可能性も出てきます。

なので、建物の高さって結構重要です。今回の敷地では問題ないとしても、斜線制限の厳しい敷地で家を建てることの多い池田住宅としては、少しでも『高さの低い地熱住宅』が出来るようにしておく必要があります。
1階天井高と配管スペース

そこで、今回は階高を変えずに配管スペースを取るために、左の図のように配管を通す部分のみ1階天井高を下げる、という方法を取る事にしました。


つまり、天井高の必要な部屋は高く、逆に玄関ホール、トイレや洗面などの空間は低く設定し、ふところの多い部分を使って各部屋に換気ダクトを配管するんです。

また、2階に関しては今までと同じ、『全て勾配天井仕上げ』にしながら、各部屋に配管する方法を考えることにしました。

方法としては、家の中心の小屋裏に換気システムをまとめ、そこから放射状に各部屋に配管するという方法です。

露出配管部分に使うスパイラルダクト
しかし当然天井のない部分なので、配管が室内に露出してくることになります。
これら見えてくる配管を極力少なくして、最悪露出してくる配管は露出専用の化粧配管(スパイラルダクト)を使ったりする事で隠す事にしました。

数本の配管を隠すためだけに全て天井を張ってしまうのではなくて、本当に必要な部分のみに細工をする。一番無駄のない合理的な方法だと思います。


モデルハウスの敷地条件

さて、今回のモデルハウスを計画している敷地は少し変わっていて、南側と西側が道路に接している『巨大な三角形』の敷地なんです。

まぁ、通常の工務店ならこんな敷地は『絶対に!』選ばないと思います・・・

ところがうちのスタッフはみんなこんなロケーションの敷地が大好きなんです。
だって、きれいな形をした土地より安価だし、敷地形状を生かして面白いプランを入れやすいからです。
変わり者の集まりで〜す(笑)

南側道路なので日当たりもよく、むしろ西側からの『西日』をどう遮るのかが一つのポイント。


で、もう一つ私たちがこの敷地に惹かれた理由があるんです。
それは『北東側の見事な眺望』なんです。


電柱に登る小谷。腰が引けてます・・・
道路を歩く人の目線からは何も見えないんですが、4〜5mの高さ(つまり2階の高さ)から見ると、遠くに見事な山並みが連なり、このあたりではなかなかお目にかかれない景色が望めます。

この土地を決める前に、高所恐怖症の僕がわざわざ電柱に登って景色の確認までしましたから間違いなし!(笑)


ということで、通りを歩く人の視線、2階の眺望を考えると、『この家は2階リビングしかないやろ!』というのが僕も含めスタッフ全員の意見でした。

ただ問題は『一番眺めのいいところにどの部屋を持っていくか』ってところでした。
単純に考えると『リビング』なんですが、あまりに単純。

そして僕にはどうしてもやってみたい事が・・・

2階の高さから見た山並み
それは『湯船につかりながら山並みを見る』。これですよっ!

山並みを眺めながら入る朝風呂・・・夜はビールなんて飲みながら・・・最高です!
(完全に自己満足の世界ですが、でもこんな家に住みたいんです!)

今回できるならこの展望風呂を実現したかったので、まずはこんなプランを第一案として書き上げました。
まさに『フロが主役の家』です。


プランその1 『山並みの見える展望風呂のある家』

これが第1案プランです。
名づけて『山並みの見える展望風呂のある家』です。

『山並みの見える展望風呂のある家』1階
『山並みの見える展望風呂のある家』1階プラン
『山並みの見える展望風呂のある家』2階
『山並みの見える展望風呂のある家』2階プラン


『山並みの見える展望風呂のある家』

●1階に寝室・子供室を配置。2階北東の一番眺めの良い場所には浴室と小さな坪庭テラスを設けてみました。

●家の中央に玄関ホールと2階まで達する吹き抜け。玄関ホールに南側の日を取り込めるように。さらに地熱住宅を象徴する床下の空気を動かすダクトを煙突のように1階から2階天井まで立ち上げて、玄関ホールのシンボルとしてみました。

問題だった換気システムとダクト配管に関しては、基本的に2階天井は全て無垢材を使った勾配天井として、家の中央部にある吹き抜け部分のみ平らな天井部分を作り、その上に換気システムを配置。
そこからリビング・和室・洗面に排気ダクトを配管、という方法を取る事にしました。

デッキの高さを調節して、デッキ越しに山並みが見えるように。
特にこだわったのは2階浴室部分。デッキテラスの床を浴槽の縁と同じ高さに合わせて、『湯船につかりながらデッキの延長上に山並みを眺められる』ように考えてみました。


僕的にはこのプランをスタッフに見せて、その反応を見るためのタタキ台にしようと考えてたんですが・・・

『LDKからいい景色が全く見えへんがな。フロ重視しすぎやで。』

『家の大きさのわりにリビングがなぁ・・・しかも西面ってないやろ』


予想どおり反応が悪かった・・・

ただ僕的にも同じ事を思っていたので、まぁ仕方ないな、と。
あくまでタタキ台ですからね。

そこですぐに第2案を考えることに。
第一案のおかげである程度問題点は見えたので、これを踏まえてと・・・

次のアイデアは、『浴室とリビング両方から出られるデッキを設けて、お互い北側の景色を共有させてみようプラン』です。


泣く泣く『展望風呂』をあきらめる

さて、意気揚々次のプランを考え始めたんですが、ここで思わぬ落とし穴にはまり込んでしまいました。

北側にテラスを取り、そこをリビング・浴室両方から繋げようとすると、2階がめちゃくちゃ大きくなるんです。

そこでいろいろやりくりして2階面積を小さくしようとすると、今度は家の面積の割にリビングめちゃ狭い〜
う〜ん・・・ここで思考が完全に停止してしまいました・・・

と、ここで僕がハマり込んでいたのは2階リビングプランの場合によく陥る『1階と2階のボリュームの違い』という問題。

導線的に考えると、LDKと洗面・フロなどの水廻りは同一フロアにあった方が便利です。そこで2階リビングの場合も2階に水廻りを配置しようとすると、


1階:玄関・主寝室・子供室

2階:LDK・和室・洗面・フロ・バルコニー


という配置になり、明らかに2階に必要なものが多くなりすぎます。

このバランスを取ろうとすると、大きい家の割にリビングが狭くなったり、逆に子供室や寝室が異常に大きくなったりしてしまうんです。


今回は北東側の眺望をリビングと浴室両方から眺めるための『デッキテラス』を取る、という考えがあったために、余計に2階がデカクなっていました・・・

これが『地熱住宅』でなければもっと大胆なプランも考えられたんですが、とにかく今回は家の形状をややこしくして熱損失の大きな家にしてしまうと意味がなくなってしまうので、泣く泣く『展望風呂』をあきらめ、洗面・フロなどの水廻りを1階に移動することにしました。


今度は考え方をガラッと変えて・・・

●2階の眺望のいい部分にはリビング・ダイニングを。
●お風呂は1階に持っていくけど、敷地の広さを利用して『露天風呂』のような雰囲気に。

これを第2案のコンセプトにしてもう一度プランニングすることにしました。



『部屋付露天風呂のある家』

第2案に関しては、基本に帰ってゾーニングから入ってみました。
必要な部屋を、必要な位置に配置していく、って手法です。

第1案からの変更点は・・・

●2階の大きなテラスをやめる
●浴室・洗面を1階に移動
●寝室と浴室に面して中庭を取って、そこにシンボルツリーを。
●かわりにリビングを2階東側に配置

これを頭に入れながら必要なスペースを配置してみます。

これがゾーニング途中の図面です。

第2案ゾーニング1階
『第2案ゾーニング』1階
第2案ゾーニング2階
『第2案ゾーニング』2階


こうやって見てみると・・・

●2階にデッキやお風呂を配置しなくてよくなったので、南北方向の奥行きが必要なくなり、全体的に東西に長くなりそう。

●展望風呂に変わる案としての『中庭スペース』は、シンボルツリーによる西日の遮蔽効果を狙って南西側に。

●となると自然と寝室は西、子供室は東になりそう。

●浴室、洗面も中庭に面した位置にするとすれば、南側に伸ばすしかない?


面積的に少し大きすぎるのでそこを調整して、洗面と浴室、玄関廻りの配置の微調整、2階換気スペースの配置場所確保と・・・


さぁ、やっと大体のプランが出来上がりましたよ。
これが第2案、名づけて『部屋付露天風呂のある家』です。

『部屋付露天風呂のある家』1階
『部屋付露天風呂のある家』1階
『部屋付露天風呂のある家』2階
『部屋付露天風呂のある家』2階

『部屋付露天風呂のある家』

●敷地の形状を生かして設けた『中庭スペース』。ここには寝室と浴室・洗面からの眺望、さらに濡れ縁を介しての一体感、シンボルツリーによる西日除け・・・とたくさんの役割を持たせました。

●2階東側の一番眺望のいいところにリビングを配置。そこからリビング→キッチン→和室という配置に。家の中心部分には階段室や収納、トイレなどを集中させて、上部に換気スペースを確保。

●階段スペースと2階リビングとの取り合い部分は半透明のツインカーボで間仕切ることで、暗くなりがちな中心部分にも採光できるようにしました。


苦節3ヶ月、悩みに悩んだ『地熱住宅』モデルハウスプラン。

やっと、やっと完成しました!!!

それではここで、3Dパースも交えながら詳しくご紹介して行きたいと思います。

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